『宇宙創生』
(サイモン・シン[著]、新潮社)
一昨年紹介した(けど誤ってページを消してしまった)『暗号解読』の著者、サイモン・シンさんの本。古代ギリシャ時代から人々がどのようにして地球の大きさを測り、相対性理論までたどり着いていったかという人類と科学の挑戦が記されている本。
これを読むまで、地動説vs天動説の戦いは、宗教的には正しいとされているが実際の現象に即していない地動説vs宗教的にはナンセンスだが、実際の現象に合致している天動説だと思っていた。
しかし、アリスタルコスらが考えていた初期の天動説では公転による星の視差が観測できない点や、公転による一方向からの強風が発生しない理由などが説明できず、地動説に対する優位は惑星の運動をシンプルに記述できるというのみで、常識的にも地動説は受け入れがたい状況にあったという話なんかはへぇと思った。
あと今でこそ"科学技術"と一括りにされているが、もともと"科学"と"技術"は異なる体系で進歩していった話とかもなるほどなと。酒造技術は発酵が科学される前から存在していた訳で。
この本は上下巻に分かれている上に、まだ上巻の20%くらいしか読んでないのでこの後どんな話が出てくるか分からないが、人間と真理の戦いが描かれていてエキサイティングな内容。科学とは何か、宇宙とは何か。頭は生きているうちに使わないともったいない。
『約束のネバーランド』
(白井カイウ[原作] 出水ぽすか[作画]、集英社)
今年読んだ中で一番面白かったマンガ。「このマンガがすごい2018」の男性部門の1位らしいので、今更自分が紹介する必要もないかも。
田舎の孤児院にいた少年少女が、孤児院に隠された秘密を知り......という内容。
ネタバレになるのであまり書けないけど、ダークファンタジーな要素があってそれがまた良い。
1月からアニメ化するらしいので、アニメだけでも。とてもオススメ。
"アニメのリンク"
ノイタミナ枠だって。
『ロジカとラッカセイ』
(紀ノ目[著]、新潮社)
ゆるめファンタジー系のマンガ。よく分からん世界のよく分からん生物とヒトとよく分からん住民たちのゆるふわ日常物語。
くらげバンチのサイトで1話と最近の話を試し読みもできる。
こちらも1巻の最後に明かされる情報でちょっとダークっぽくなるけど、基本的にはみんな今を楽しく生きているので良い。
番外編、
『レナードの朝』
オリバー・サックスさんという医者の体験を基に作られた物語。
あらすじは『アルジャーノンに花束を』に似ていて、話すことも体を動かすこともできない神経病の患者の多い病院に赴任した医師が色々あって彼らに有効な治療法を見つけ少しずつ彼らが回復していくという話。レナードという患者が30年ぶりに目覚め、人生の素晴らしさに感動し初めての恋もする。しかし…
という内容。
オリバー・サックスさんは本もたくさん出していて先日読んだ『火星の人類学者』という本には、著者が実際に出会った、脳に問題を抱える様々な患者との一見奇妙な触れ合いが描かれている。
交通事故により、なぜか視覚がモノクロになってしまった画家。
目が見えなくなったのにそことに気づいていない人。
幼少期に住んでいた街の道端の石ころの色と形にいたるまd
脳はつくづく不思議なもので、誰しもがいわゆる健常と障害の間のグラデーションの中に分布をしていて、時とともにその位置も移ろっていく。
自分がいつどんなきっかけで脳に問題が起きないとも限らないと思うと急に怖くもなる。しかし、生まれた時は目が見えていたが子供の頃に徐々に失明していった患者が大人になり、新しい治療で視力がわずかに回復したが、見える世界が恐ろしく、中途半派に見える世界に馴染めず望んで盲人に戻っていった話もあり、自分が思っている価値というのは健常者サイドから見たものであって、彼らには彼らの価値感があったりする。
とりあえず、人生なるようになるしかないので、常に今を楽しく生きて行きたい。
それでは良いお年を。