2018年12月30日日曜日

今年読んだ本で良かったものとか2018



『宇宙創生』

(サイモン・シン[著]、新潮社)



一昨年紹介した(けど誤ってページを消してしまった)『暗号解読』の著者、サイモン・シンさんの本。古代ギリシャ時代から人々がどのようにして地球の大きさを測り、相対性理論までたどり着いていったかという人類と科学の挑戦が記されている本。

これを読むまで、地動説vs天動説の戦いは、宗教的には正しいとされているが実際の現象に即していない地動説vs宗教的にはナンセンスだが、実際の現象に合致している天動説だと思っていた。
しかし、アリスタルコスらが考えていた初期の天動説では公転による星の視差が観測できない点や、公転による一方向からの強風が発生しない理由などが説明できず、地動説に対する優位は惑星の運動をシンプルに記述できるというのみで、常識的にも地動説は受け入れがたい状況にあったという話なんかはへぇと思った。

あと今でこそ"科学技術"と一括りにされているが、もともと"科学"と"技術"は異なる体系で進歩していった話とかもなるほどなと。酒造技術は発酵が科学される前から存在していた訳で。

この本は上下巻に分かれている上に、まだ上巻の20%くらいしか読んでないのでこの後どんな話が出てくるか分からないが、人間と真理の戦いが描かれていてエキサイティングな内容。科学とは何か、宇宙とは何か。頭は生きているうちに使わないともったいない。



『約束のネバーランド』

(白井カイウ[原作] 出水ぽすか[作画]、集英社)


今年読んだ中で一番面白かったマンガ。「このマンガがすごい2018」の男性部門の1位らしいので、今更自分が紹介する必要もないかも。

田舎の孤児院にいた少年少女が、孤児院に隠された秘密を知り......という内容。
ネタバレになるのであまり書けないけど、ダークファンタジーな要素があってそれがまた良い。

1月からアニメ化するらしいので、アニメだけでも。とてもオススメ。


ノイタミナ枠だって。


『ロジカとラッカセイ』

(紀ノ目[著]、新潮社)

ゆるめファンタジー系のマンガ。よく分からん世界のよく分からん生物とヒトとよく分からん住民たちのゆるふわ日常物語。

くらげバンチのサイトで1話と最近の話を試し読みもできる。

こちらも1巻の最後に明かされる情報でちょっとダークっぽくなるけど、基本的にはみんな今を楽しく生きているので良い。



番外編、

『レナードの朝』


オリバー・サックスさんという医者の体験を基に作られた物語。

あらすじは『アルジャーノンに花束を』に似ていて、話すことも体を動かすこともできない神経病の患者の多い病院に赴任した医師が色々あって彼らに有効な治療法を見つけ少しずつ彼らが回復していくという話。レナードという患者が30年ぶりに目覚め、人生の素晴らしさに感動し初めての恋もする。しかし…
という内容。

オリバー・サックスさんは本もたくさん出していて先日読んだ『火星の人類学者』という本には、著者が実際に出会った、脳に問題を抱える様々な患者との一見奇妙な触れ合いが描かれている。

交通事故により、なぜか視覚がモノクロになってしまった画家。
目が見えなくなったのにそことに気づいていない人。
幼少期に住んでいた街の道端の石ころの色と形にいたるまd
脳はつくづく不思議なもので、誰しもがいわゆる健常と障害の間のグラデーションの中に分布をしていて、時とともにその位置も移ろっていく。

自分がいつどんなきっかけで脳に問題が起きないとも限らないと思うと急に怖くもなる。しかし、生まれた時は目が見えていたが子供の頃に徐々に失明していった患者が大人になり、新しい治療で視力がわずかに回復したが、見える世界が恐ろしく、中途半派に見える世界に馴染めず望んで盲人に戻っていった話もあり、自分が思っている価値というのは健常者サイドから見たものであって、彼らには彼らの価値感があったりする。

とりあえず、人生なるようになるしかないので、常に今を楽しく生きて行きたい。


それでは良いお年を。

2017年12月29日金曜日

今年読んだ本で良かったものとか2017

『これが見納め』

(ダグラス・アダムス / マーク.カワディン[}、みすず書房)

銀河ヒッチハイク・ガイドで有名なダグラス・アダムス氏が動物学者と共に世界中の絶滅に瀕している生物に出会いに行く話.旅の道中に起きた出来事や出会った人々が,彼特有のウィットに富んだ文章で記されており,どのページもニヤリとしてしまう.

自分自身,「絶滅しそうな動物を保護するのは当然だけど,かたやその日のご飯もままならない人間もいる中で,何にどこまでお金をかけるべきなのか,そもそも生存競争で弱い生き物が滅びていくのは自然の摂理であり,保護は人間のエゴではないのか?」とかいろいろと疑問があったが,この本に書いてあった.「かれらがいなくなったら,世界はそれだけ貧しく,暗く,寂しい場所になってしまう」
という文章を読んでしっくりきた気がした.
パンダが絶滅したところで,自分の生活に何か影響が出るかは分からないが,パンダのいない世界よりはパンダのいる世界の方が好きだ.

この本は1990年に出版された本で,どんな経緯があったのが2011年に日本語版が出版された.内容は少々古いが,当時の状況を知り,その後最新の状況を調べると,この30年間の保護活動の成果が分かり,面白くもあり辛くもある.

ダグラス・アダムス好きなら間違いなく楽しめるし,そうでなくても楽しめると思う.
Kindle版は出ていないし,3000円以上するのでちょっと手を出しにくいが,間違いなく今年読んだ中で一番の本.



「インベスターZ

(三田紀房[]、講談社)


ドラゴン桜で有名な三田紀房さんの投資に関する学園ものも漫画.

主人公が入学した授業料無料の超有名私立校は,秘密裏に存在する投資部が産む利益によって運営されており,そこに入ることになった主人公が投資をゼロから学びつつ学校の資産を増やしていくというストーリー.

「株とか投資とかなんとなく興味はあるけどよく分からないし,損したく無いし面倒だからいいやー.」と思ってる自分みたいな人はその辺が学べて楽しめると思う.株,不動産,金(Gold)FX,生命保険,ベンチャー投資と言った投資全般のことに加え,日本の歴史や経済成長と金融の関係にも触れていて,お金に関する一通りの話題が学べる.
株を買うためには企業研究が必要であり,どんな企業が今後伸びるのかといった視点は就活でも必要なので,これから就活・転職・起業する人は特に興味を持って読めると思う.

「これを読んで投資を始めろ!」といった投資のハウツー本ではなく.マンガで社会の仕組みが学べる感じで楽しかった.既に完結していて全21巻の作品.




番外編 -買ってよかったもの-


Google home mini


Googleの出したスマートスピーカー(の安い方).

自分はスマホの音声認識とかSiriの類を全く使わない人間だが,新しいガジェットは好きなので話のネタにと購入.(セールで半額の3000円だった)
使ってみると想像以上に音声認識の精度が高く,機能次第では実用性が高そう.機能としてはスマホに搭載されている"Googleアシスタント"と代わりが無いが,ノーモーションでいきなり話しかけて反応するというのは,なかなか面白い体験.ワンルームの部屋ならだいたいとこにいても,普通に人に話しかける音量で反応する.

ただ,自宅には連携できる家電は無いしSpotify等の音楽サービスも契約していないので,できることは限られているが,カップ麺を作る時のタイマーや,朝の支度中にニュースを流したり,天気を確認したりするのに便利.あとBTスピーカーとして使うこともできる.

文字にすると大した機能では無いし,無くても不便では無いけど,あると楽しい.
一ヶ月後には飽きてるかもしれないけど...



RX100



SONYのハイエンドコンパクトデジカメ.

一眼レフは疎か,ミラーレスも持ち歩くのが億劫になってきて,ポッケに収まるサイズでそこそこ撮れるカメラが欲しいと思って買ったもの.
RX100シリーズは5世代目まで出ており,Ⅲは2年も前のカメラだが,価格と性能のバランスが良く,シリーズの中で最も人気な機種(ってビックカメラの店員さんも言ってた).SONYの一眼を使っている人にはUIが同じなので使いやすく,コンパクトながら結構ボケるし絞ればしっかり解像するしで,画質はエントリークラスの一眼レフと同じかそれ以上かと.

「カメラに興味あって昔に一眼レフ買ったけど,重くて結局使わなくなった.けどスマホだと少し物足りないかなー」という人にオススメ.
お値段は7万円を切るくらいで,これを安いとみるか高いとみるかは人それぞれだが,最近のスマホのカメラは相当レベルが高いので,これより安いカメラを買ってもスマホと対して変わらず,安物買いの銭失いになる気がする.




あとこれを買いている最中に誤って,2016年末に買いた「今年読んだ本で良かったもの2016」を削除してしまった.ショック.

2016年9月24日土曜日

骨を見てきた。

動物の本物の骨が見られる展示会に行ってきた。

たまたまラジオでこの展示会の存在を知り、気になっていた時、
近くに行く機会があったので寄ってみました。

会場は上野駅から歩いて10分くらい、東京大学本郷キャンパスの裏に位置する文京区の施設。
建物の2階の一部屋が展示スペースとなっている。


部屋に入ると一面の骨。
もっと規模の大きなものを想像していたので少し拍子抜け。
でも、よく見ると一つ一つの存在感が強く、独特の臭いも相まって、
エネルギー密度の高い空間が形成されている。



まず入口に鎮座しているのが、アジアゾウの頭部と下アゴの骨。
骨格には詳しくないのでいまいちピンとこなかったが、
後ろのモニタに簡単な解説動画が流れており、
・ゾウの鼻には骨がない
・歯は奥歯の方からドンドン生えてくるので,薄い歯がいくつも重なっている
といった事がことが分かった。



ゾウの隣の隣にいたのがキリン。
キリンのツノ?の部分って骨があるんですね。
形が特徴的なので、すぐにキリンだと分かる。

ツノのデコボコし感じがリアルで、滅茶苦茶かっこいい。
眉間のツノ(?)も思っていたより高い。今度、動物園に行ったときは注意して見てみよう。



ライオン。
歯の形が今まで見てきた草食動物と全然違う。
牙をベースにして頭蓋骨が設計されてる感じ。



ゴリラ、オランウータンはかなりヒトに近い。
ただ、どちらも頭頂部が球形でなく、ヒダ状のパーツがある。
一見似ていたけど、よく見るとヒトとは全然違う。



一番、ヒトに近そうに見えたのがパタスザル。
写真では分かりにくいけど、握りこぶしよりも一回りほど小さい。
頭の形が綺麗。



ゾウ、キリン、ライオンとった大型で有名な動物だけでなく。
イヌ、ネコ、ハムスターといった小型動物から、イルカ、カメ、といった海の生物、
インドガピアル、マーラ、ドールといった、名前を聞いてもピンとこない動物まで、
多様な種類の骨が見られる。



もちろん、頭蓋骨以外の展示も。
こちらはケヅメリクガメの甲羅。

内側から覗くと、甲羅が背骨と一体化しているのが分かる。
この甲羅、学術的には背甲(ハイコウ)と言い、お腹側の甲羅は腹甲(フッコウ)と呼ぶらしい。
カメの甲羅と言えば、分厚くて頑丈なものを想像していましたが、
厚さは5mmくらいで、光が透けるほどの薄さ。
もちろん、種類にも寄るだろうが。



特に説明がなかったけど、たぶん肋骨。
どれも大きさは違えど、形はほぼ同じ。
スケール効果により、全長の累乗で断面積が増しているように見える。



こちらはシロサイの角。
サイの角は皮膚や爪と同じケラチンでできているので、骨ではないらしい。
何にせよ、ディテールが凄まじい。
どうやったら作れるんだこんなもの......



空を飛ぶ哺乳類であるコウモリは指と指の間に膜がある。
生きている時は、さらにこの手と尻尾も膜で繋がり、翼を形成しているらしい。
軽量化のため、同サイズの飛ばない動物と比べると、骨が恐ろしく細い。


全体的に解説が少なめ(というかほぼ無し)なので、
頭蓋骨や手足以外の骨は、どこの部位か分かりかねる。
詳しい人と一緒に行くと,より楽しめそう.


写真手前はキリンの頸椎。
壁には骨の写真が飾ってある。



やはり頭蓋骨のテーブルが一番迫力がある。



こちらはナイルワニ。
ゴツゴツとした鼻先の形が骨からもよく分かる。



あと、印象的だったのだアオウミガメ。
目の掘りが仮面のようでとにかく格好良い。

チーターのような鋭い眼光。
生前のおっとりとした顔からはとても想像できないスマートな骨格。


他にも、ペンギン、カピバラ、イルカ、ペリカン、ヘビといった
様々な動物の骨が見られる。


自分の体の中にも、こんなものが何十個も入っていると思うと不思議。


東大の獣医学者の教授が展示監督をしていることもあり、
どの骨も非常に状態が良く、また見せ方も美しく、見入ってしまった。


かつて生き物の一部であった、本物の骨の存在感はとても写真では伝わらないので、
興味のある人は是非。
11月の終わりまで開催していて、無料だし非常に空いているので、ゆっくり見られます。



イベント概要
名前:「骨を見る 骨に見られる」
期間:2016年07月08日 ~ 11月26日
時間:09:00-17:00
休館:日曜・祝日
場所:文京区教育センター
料金:無料
URL:http://www.um.u-tokyo.ac.jp/exhibition/2016honewomiru.html